2017年5月1日月曜日

植物病理学と共生

「植物病理学の父」と称されるドイツ人微生物学者、ド・バリーは
病原微生物による寄生も共生の一部である
という言葉を遺しています。

アントン・ド・バリー(1831-1888)

1843年頃よりヨーロッパでジャガイモの葉が黒ずんで枯死する病害が蔓延し、ジャガイモ不足により100万人以上もの餓死者がでました。
そんな中、ド・バリーはジャガイモ疫病の原因菌を同定し、初めて微生物が植物の病気の原因となることを証明しました。

ド・バリーは、健全なジャガイモに、病気のジャガイモから採取したカビの胞子を振りかけたところ同じ症状が引き起こされたことから、このカビが病原であることを示しました。
彼はこの菌をPhytophythora infestansと名付けましたが、Phytophythoraは「植物の破壊者」、infestansは「破壊的蔓延」という意味です。

彼はまた、コムギに発生する黒さび病菌がメギ属植物に寄生する菌と同じであることを突き止め、さび病菌が宿主交代することも発見しました。

植物の病気が微生物によるものであるという発見自体が初めてのことであったのに、餓死者が出るほど深刻な影響をもたらす病害を目の当たりにしながらも、その現象が植物がごく普通に営む「共生」という活動の一環であることを見抜く洞察力は、微生物学者であったド・バリーならではのものだったのかもしれません。

ちなみに「共生」という言葉自体、ド・バリーが考案しました。
このように植物病理学と共生とは密接な関係にあるのです。

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