井の頭自然文化園は、現在では動物園として知られていますが、もともとは武蔵野の雑木林の植生をのこす「植物生態園」として機能していました。
そのため、園内に入ると武蔵野の雑木林の面影が感じられるところがあったり、樹齢の長い樹木や貴重な樹木が植えられたりしているのです。
いわば、「植物園の中に動物たちがいる」という感じ!
実際、動物たちは伐採などで切られた枝をエサにすることもあるそうです。
たとえばカモシカはアオキの葉を食べ、残った枝をヤクシカにやると樹皮の青い部分を食べるのだとか。
余すところなく有効活用されていますね。
古くは江戸時代の食料不足に際して、武蔵野の地に畑が開拓され、その周りに雑木林が作られたという経緯があります。
雑木林の木は通常15~20年ほどで切られ、腐葉土や炭・薪として利用されるのですが(それ以上長く成長すると萌芽が出てこないのです)、今ではその必要がなくなり、樹木が高齢化しました。
当時はクヌギやコナラが優占種でしたが、今では園内に多くみられる樹木はイヌシデやアカマツといった種です。
また、植物生態園として開園した当時は1000本ものシャクナゲが植えられ、中には貴重な品種のものもあったそうですが、シャクナゲは暑さに弱いためどんどん減ってしまい、今では20本となってしまいました。
残されたシャクナゲをなんとか守ろうと、農園芸職員さんたちが、接ぎ木や挿し木で再生を図っています。
最後に、この日のツアーで印象的だった樹木の花を紹介します。
ウケザキオオヤマレンゲ(Magnolia Watsoni Hook. f.)というモクレン科の樹で、オオヤマレンゲとホオノキの雑種です。
花はオオヤマレンゲ、葉はホオノキという感じでした。
オオヤマレンゲの花は下向きに咲くのですが、この雑種では上向きに咲くのでウケザキなのです。
たまたま蕾が落ちていたので、職員さんがその場で花びらを剥いて中身を見せてくださいました。
ウケザキオオヤマレンゲの蕾を剥くと…まだ寝ている雄花と雌花が。 |
真ん中の緑色の部分が雌しべ、周りを囲んでいる赤い部分が雄しべです。
咲く時には、まず1日目に雌しべ、2日目に雄花が開き、3日目には咲ききっておちてしまうのだそうです。
独特な匂いで虫をおびき寄せ、受粉を促します。
約一ヶ月にわたって少しずつ花を咲かせるのが特徴です。
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