2017年5月2日火曜日

根粒菌と菌根菌

根粒菌と菌根菌は、植物に特に重要なはたらきをもたらす共生菌の代表格です。
宿主となる植物やこれらの細菌には、共生関係を築くためのしくみがあります。

まずは根粒菌。
根粒菌は、植物の根から分泌されたflavonoid類を認識すると、Nodファクターを発します。
Nodファクターとは、N-アセチル-D-グリコサミンからなるオリゴ糖です。
Nodファクターを認識した根は屈曲し、細菌が根毛内に取り込まれ、根粒形成が促進されます。
めでたく植物と共生関係を結んだ根粒菌は、Nif遺伝子群やFix遺伝子群を発現させ、窒素固定能を発揮し植物に恩恵を与えます。

一方の菌根菌。
よく知られるアーバスキュラー菌根菌、いわゆるAM菌は4億年も昔に起源をもつグロムス菌門に属する糸状菌であり、根の皮層細胞内に樹枝状体(arbuscule)と呼ばれる栄養交換器官を形成することからその名がつけられました。
幅広い種類の陸上植物がアーバスキュラー菌根菌と共生関係を構築しています。
植物が発する菌根菌共生シグナルとして、二つの植物ホルモンが知られています。

◆ストリゴラクトン
ストリゴラクトンはリン欠乏条件下でアーバスキュラー菌根菌との共生を促進し、リンの獲得を促進すると同時に、植物の分枝を抑制することでリン消費の節約に寄与することが知られている植物ホルモンです。
ちなみに、穀物の根に寄生しアフリカを中心に重大な農作物被害を引き起こしているストライガ(Striga; witchweed)は、栄養不足に陥った植物が根から分泌したストリゴラクトンを認識して忍び寄り、寄生関係を結びます。

◆ジベレリン
ジベレリンもアーバスキュラー菌根菌との共生に関わることが知られています。
おもしろいことに、ジベレリンは菌根菌の共生において正にも負にも調節していることが明らかになりました。
もともと、ジベレリンの添加により菌根菌の感染が阻害されることは知られていましたが、正の作用が確認されたのは比較的最近の2015年のことです。
(参照:http://www.nibb.ac.jp/press/2015/01/19.html

ジベレリンによる菌根菌感染の正と負のコントロール

この研究では、感染後にジベレリン合成阻害剤のウニコナゾールP添加やジベレリンシグナル抑制により根内部での菌糸の分枝が抑制され、樹状体形成率が低下することが発見されました。
つまり、このしくみによれば感染によりジベレリン合成が活性化されることで、菌糸の分枝が促進されると同時に、ジベレリンの負の作用により重複した感染を防ぐことができるのです。
ジベレリン添加の時期・量の調節により感染をコントロールできるため、農業への応用が期待されています。

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