尊敬する人のことば、励ましのことば、諭されることば、偉人が遺したことば…。
ことばを大切にすることは、強くまっすぐに生きる力になります。
「ことばが心に響く」ということは、自分が一歩先へ前進するためにそのことばが必要であるということ。
だから、心に響いたことばを大切にし、書き留めておくと、自分の成長の軌跡を振り返ることができるのです。
殿ヶ谷戸庭園の池にて(国分寺) |
2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大隅良典先生の言葉で、心に響いたものがあります。
『若い皆さんは、自分が何に興味があるのか、常に意識するようにしてください。いろいろなことに幅広く興味をもつことも大事ですが、時間は限られていますから、そのなかからもっとも自分の感性にあったものを選りすぐり、そこに力を注ぐことが必要です。時とともに気持ちや興味は変化してもよいのですが、これもあれも…と対象を絞り込めずにいると、寝ても覚めても勉強し続けなければ…という強迫観念にかられるようになってしまいます。また、「知っていること」と「理解していること」とは違います。教科書などの知識を覚えているだけでは、物事の本質を理解できているとはいえません。自分の納得のいくまで、理解を深めるよう心がけてみてください。』
この世界は不思議に満ちていて、ついあれもこれも魅力的に感じてしまう。
けれども、あれもこれも覗いてみたところで、ちっとも世界は見通せず、結局何もわからないちっぽけな自分に途方に暮れ、世界の中でぽつんと一人取り残されたような不安に駆られることがあります。
どうすれば、この美しい世界の神髄に触れることができるのでしょう。
大隅さんの言う通り、ひとつのものを選りすぐることは、裏返せば他の選択肢を捨てることになりますが、ひとつのことに力を注ぐことができなければ、「世界の神髄」にはたどり着けないのかもしれません。
ある時、面接官の人にこんな言葉をかけられました。
『一芸に秀でたる者は、多芸に通じる』と言いますから、今やっていることに精一杯励んでください。
将来のことを考える就職活動の最中でしたが、将来のことをあれこれ思い巡らすばかりでなく、今やっていることに集中する力を養うことが、今後生きていく上での自分の財産となるのだいうことを学びました。
棋士の羽生義治さんは次のように言っています。
「何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱・気力・モチベーションをもって継続しているのは非常に大切なことであり、私はそれこそが才能だと思っている。」
目移りしてしまうのは、実は一つのことに集中してそこで失敗するのが怖いからなのです。
その恐怖を取り払わなければ、一つの道を極め「世界の神髄」に触れることはできないのでしょう。
将来の進路についての悩みをアメリカに住むホストマザーに打ち明けた時、こんな言葉をもらいました。
"Follow your heart, and give it your best shot."
とても勇気をもらった言葉です。
自分の進む道を選択する上で、自分の気持ちに素直に従うことは、大隅さんの言う「自分の感性に合ったものを選ぶ」ということであり、成功の秘訣でもあるのでしょう。
私はこれまで、自分が見てきた世界に面白いこと・分からないこと・美しいことがいっぱいで、わくわくしながら風呂敷をめいっぱい広げてしまって、収拾がつかずとても苦しくなっていました。
でも、ここに挙げた言葉は、私が今後長い時間をかけてその風呂敷を綺麗にまとめあげていくのに必要な力を与えてくれると信じています。
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