たとえば、薬用成分として有効なアルカロイド類が含まれるニチニチソウでは、師管付近の細胞内で生合成のある段階まで作られた後、乳管細胞や異型細胞へと輸送され、さらに生合成が進み、蓄積されることが最近明らかになってきました。(Mimura, T. et al. PNAS, 2013, 113, 3891-3896)
では一体、どのようにして調べたのでしょうか。
先に挙げた論文を発表した神戸大のグループは、以下の2つの最新の手法を用いました。
①一細胞質量分析
②イメージング質量分析
ここでは一細胞質量分析について、注目してみようと思います。
一細胞質量分析とは、「生命体の分子変化を、1細胞・1細胞小器官のレベルでリアルタイムに追跡できる手法」であり、2015年に理化学研究所より発表されました。
その操作手順は、Nature Protocolsに報告されています。
〈プロトコル〉
・生細胞から、ナノスプレーチップという金属コート(伝導性の金など)した、先端口径数μmほどのガラス細管を用いて細胞内成分を吸引
・チップ後端からイオン化有機溶媒を導入し、質量分析計の資料導入部に配置
・電圧を印加すると、イオン化された試料分子群が霧とともに質量分析計に導入される
・数百~数千のイオン化分子を検出し、数分ほどで質量分析を行う
一細胞質量分析の例(Nature Protocols, 2015, 10, 1445-1456より) |
この手法により、1pLにも満たない細胞内成分の分析が可能になりました。
こうした技術が広く活用されれば、野菜や果物の育成・育苗の条件検討において、より早い段階での判断が可能になるため、農業技術の研究開発が加速されることが期待されるとのことです。
こうした技術が広く活用されれば、野菜や果物の育成・育苗の条件検討において、より早い段階での判断が可能になるため、農業技術の研究開発が加速されることが期待されるとのことです。
応用分野のみならず、いままで顧みられなかったような植物の特定の細胞から、思いもよらなかった化合物の発見が実現するかもしれません。
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